AIエンジニアの「採用」の観点で思うこと

データサイエンティストや機械学習エンジニアという職種が話題になってからもう数年経つと思います。依然として募集も多いですが、採用において慎重になる企業も増えてきている肌感を感じています。 こうした背景には、AIの失敗経験や膨大にかかるコストなどが表に出てきたことも要因かと思われます。

自分自身は機械学習エンジニアとして働いているのですが、AIエンジニアの採用については肯定派と否定派の両方に賛成できる部分があるなぁと感じてます。

そこで今回は自分の経験をもとにこの辺りについて整理し、AIエンジニアの採用について自分なりの考えを書いてみようと思います(AIエンジニアを目指している方の参考にもなるかと)。

AIの事業応用

まずAIの活用のされ方としては、「AI自体がコア技術となるサービス」と「AI自体はコア技術ではないサービス」に大別できると思います。 前者をやる場合はAIエンジニアの採用は必須になると思うためここでは考えずに、後者について考えを書いていこうと思います。

AIエンジニアはいらない?

AIをメインにやってる身としては、AIのビジネス応用の良さを伝えていきたいところですが、業務を行ってきて思うのは、AIを使わずともユーザに価値提供を行える選択肢は実際多く存在するという点です。

例えば、あるアプリに追加する新機能を考えているとします。お金が無限にあるような例外的な企業を除いて、基本的には人的リソースは限られていることになるので、必要性や収益性などから優先度をつけて取り組む開発を決定していくことになると思います。

ここで、先ほども述べたようにAIが必要な新機能は、その時点でコストや開発工数の面で非常に劣勢になってしまいます。 自分の経験上ですが、大抵のサービスでAI機能の選択肢を取る前に、より簡単に実装できて収益性も高い機能が多く選択肢として残っていると思います。それでもAIを選択する場合は、圧倒的な収益を上げる可能性のある施策であることが求められますが、そういった施策はなかなか生み出せないのが実情じゃないかと思います。

こういった都合があって、"AIエンジニアをあえて取らない"とする考え方の企業が出てきているのではないかと想像してます。 これは間違いではないと思いますし、あくまでビジネス価値の最大化を見据えていて正しい戦略だと言えると思います(とりあえず"AIでなんかやって"より幾分ましな状況だと思います)。

とはいえAIエンジニアがいないことのリスク

ここまでAIエンジニアは必要ない側の考え方の一つを書いてきましたが、とはいえAIを完全に無視してしまうと以下のようなリスクがあると思っています。

  • AI効果という側面を考える必要がある
    • 当初はAIとしてインパクトを与える機能でも、日常的に使われていくとユーザの意識下ではあって当然、当たり前のものになる
    • 社会全体ではAIの社会実装がどんどん進んでいき、当たり前が増えていく(競合・類似製品にも搭載される可能性も)
    • => AIを無視することで潜在的に展開しているサービスのUX低下を招く可能性がある
  • M&AによるAI機能やAI人材を取り込む際にも、うまく扱える専門家が必要
    • 事業の成功にスピードは非常に重要。M&Aや提携で技術を取り込むのは最もスピードが出せる方法
    • ただし、取り込んだ技術や人材を最大限生かすためには、社内にそれを評価できる人材が絶対に必要
      • 評価できる人材が不在な中でM&Aなどの大きなことをするのは良くない事例としてよく言われている
  • 会社としてのAIに対する発信がないので採用の機会も減っていく

大きくはこういった側面があるのではないかと思います。

これらについて、思い至ってから採用というのでは実際かなり後手に回ってしまうことになるので、この辺りのリスクを重視するのであればAIエンジニアを抱える選択肢が必要になってくるのではないかと思います。逆にこれらのリスクが許容できるのであれば、採用しないという判断を行うことになるのではないかと思います(AIエンジニア自体基本高いですしね)。

理想のAI人材

ここまでの観点を考慮して、自分が経営者の立場でどういったAI人材が理想かと考えると、やはり他にもスキルがある人になるかなと思います。 よくAIとバックエンドのスキルが高い人は非常に貴重だと言われますが、こういった"二足のわらじ"の側面を持ったエンジニアであれば、現在AI機能の開発がなくとも他の部分で貢献できます。

AIが今後下火になっていく可能性も考慮し、AIエンジニアとしての生存戦略を考えると、自分もそういった人材になっていかなければならないなぁと感じます。

一方で、その上で変化の早いAIの最新技術をキャッチアップし続けるのも難しいので、効率よく情報収集できる状態におく必要はあると思います。

以上、ポジショントークっぽいものをしてみました。

おまけ

そもそもAIでどれくらい稼げるのか、新しく稼げる機能が作れるのかという点は自分も気になっているところになります。 広告・商品レコメンドの領域ではデータサイエンスで大きく収益を生んだという話は聞いたことがあります。コスト削減系は普通に結構聞きますね。 他にもAIである程度稼いだり、良い機能を提供できたりとかはあるんじゃないかと思いますが、圧倒的に稼ぐ新しいものとしてはどんなものが出てくるのかという部分は気になるところです(自動運転とかはまさにそうなりそう)。

余談ですがPFNが、AIに関する事業展開を一気に進めるという記事が出ていたので、今後どのくらい利益を生んでいくのか非常に興味があり、注目していきたいところです。

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